火・水・空気・土というのは耳馴染みのある言葉だと思いますが、今回はそれらの4つのエレメント(元素)について書いてみたいと思います。
4つのエレメントは基本的な要素として肉体を構成し、体を一定の状態に保つ役割を担ってくれています。その一方で、感情や精神のレベルでは、それぞれのエレメントの特徴によって、その人の性格的な傾向として表現されることになります。
そのため、4つのエレメントを知ることは、自分自身の性格や傾向を知るための窓口になります。すべての人は多かれ少なかれ、4つ全部のエレメントを持っていますが、その中でも1つか2つ強く当てはまるエレメントがあるはずです。また、どのエレメントもポジティブな側面とネガティブな側面があり、どちらかの側面が現れています。
各エレメントのポジティブな側面(P)とネガティブな側面(N)は、大まかに次のようなものです。
火:
明晰さ、強さ、強い意志力、決断力、目的指向、責任感、精力的、リーダーシップ
嫉み、嫉妬、怒り、破壊的、理屈っぽい、頑固、横暴、せっかち
水:
平和、穏やかさ、信頼、協力的、のんびり、忍耐強さ、静かさ、仲介者、従順
悲しみ、鬱、怠惰、絶望、鈍さ、自主性の欠如、変化への抵抗、対立を避ける
空気:
想像力、明晰さ、大観、簡素さ、喜び、活動的、寛大さ、好奇心、楽観主義
傲慢さ、よそよそしさ、孤立、完全主義、忘れっぽい、気が散る、我慢の欠如、浅はか
土:
現実的、頼りになる、安定性、思慮深さ、内省的、静かさ、まじめ、精密、辛抱強さ
恐れ、恥、攻撃性、物質主義、完璧主義、疑り深い、慎重、批判的、心配性
例えば、火の要素を強く持っている人がいるとします。その人は意志が強く、決めたことは必ずやり遂げる力を持っている一方で、疲れたり、物事がうまく行かなくなると、怒りっぽく、せっかちになって、人に対して攻撃的になるかもしれません。同じ人の中でも、ポジティブとネガティブのどちらか一方だけというよりも、シーソーのようにどちらの側面も出てくる可能性のほうが大きいと言えます。
そのため、まずは自分自身を観察して、どのエレメントが強く働いているのかを理解した上で、ポジティブに出ている部分は自分の長所として大切に使っていくことと、ネガティブに出ている部分は内省や瞑想を通じて見直して、少しずつポジティブな側面へと置き換えるよう努めることで、自分の性格を高め、内的に成長していくことができます。
ヒーリングやカウンセリングによって内的な変化が起きる過程では、エレメントのネガティブな側面が浄化され、ポジティブな側面へと変容し、4つのエレメント全体のバランスが取れていきます。それによって、クライアントは、自分の感情や行動反応がポジティブな状態で作用している感覚や、ネガティブに引っ張られないような状態を、実際に感じることができるようになります。また、ヒーリングやカウンセリングを受けたからと言って、ネガティブが全然出なくなるというよりも、仮にネガティブな側に振れたとしても、立ち止まって振り返り、自分自身の在り方をポジティブな状態へ戻すためのコントロール力がついてくるようになるとも言えるでしょう。
実は、性格の中で現れている4つのエレメントの要素は常に固定されているわけではなく、人生の様々な局面で変化していきます。恐らく自身を振り返ってみると、あの頃は性格の中で火の要素が強かったけれど、今は土のほうが強いかも・・・などと感じるかもしれません。それはある意味自然なことで、私たちはすべてのエレメントを順繰り経験し、それらを内的に精錬させながら、成長しているからなのです。
段々と成長していくにつれ、性格の中でどれか極端に突出したエレメントというのは少なくなっていき、どのエレメントの要素も同じように性格の中に反映され、よりポジティブな側面だけに特徴づけられていくようになります。そして、その中心に第5のエレメントである”愛”がゆっくりと花開いていくのですが、それは成長の長い道のりの中で起きてくるものです。
次に、エレメントが人間同士の関係性に及ぼす影響についてですが、4つのエレメントは、火と水、空気と土といったように、相反する性質を持つ極同士がペアになって成り立っています。これらの2組のペアは互いに補い合っていて、火は水の持っていない要素を、空気は地が持っていない要素を持っていて、その反対も同じことが言えます。
十
この4つのエレメントの要素は個人の中で作用しているだけでなく、人との関係性にも強い影響力を持っています。これは特に身近な人との関わりを振り返ると分かりやすいかもしれません。
人との関係性の中では、どのエレメントも対極にあるエレメントを引きつける傾向があります。例えば、恋人同士で言えば、火のエレメントの特徴を強く持つ男性と、水のエレメントを強く持つ女性は強く惹かれ合う可能性があるということです。自分自身の関係性を含め、周りの夫婦やカップルなどを見てみると、パートナー同士がそれぞれ対極にある要素を持っているケースが多く見受けられると思います。
その中には、関係性がスムーズな場合と、様々な問題があって、関係性に多くの困難がある場合の両方がありますが、これには理由があります。うまくいっている場合は、火ー水、空気ー土のいずれの組み合わせであっても、それぞれがポジティブな要素で関係し合っていて、互いに持っていない要素を補い合うことで、助け合っています。
一方で、問題が多い場合には、それぞれの極のネガティブな要素同士がぶつかり合ってしまっていると言えるのです。
つまり、単純にお互いの持っている要素が違っているから、互いに理解できなかったり、衝突してしまうという訳ではないのです。両者の中にあるネガティブな要素が互いを刺激し合い、苛立たせてしまうのです。そして、そこではどちらかが攻撃者になったり、犠牲者になったり、また役割が入れ替わったりしながら、一方または両者が消耗するまで、ネガティブなゲームが演じられるのです。
けれども、そうしたネガティブなサイクルから抜け出して、健全なコミュニケーションや関わり合いを作り上げることは可能です。どちらか一方が自分の在り方を変えるために新しい一歩を踏み出すこと、また出来ることなら、両者が一緒に関係性を改善するために取り組むことです。それによって、互いを消耗させる関係ではなく、互いを育み合い、一緒に成長していけるような関係へと変えていくことができるのです。その時、互いの持っているエレメントにはよりポジティブな特性が現れてくるようになり、両者の中には、両極性を超越する第5のエレメントである”愛”が発達していくことになるのです。
(2017年10月29日)