しばらく前に本の調べ物をしている時に、たまたま関連書籍として出てきたのが、1800年代中頃にフランスで書かれた「アラン・カルデックの『霊との対話』天国と地獄」でした。試しに購入して読んでみたところ、これがなかなか面白かったのです。
19世紀後半、当時のフランスでは、交霊会の活動が活発な時期で、そうした中でスピリチュアリズム運動の先駆けとなった人物の一人が筆者のアラン・カルデックだったようです。
アラン・カルデック自身は元々霊的な事柄に関心があったわけではなく、長年医学博士、教育学者として主に書籍の執筆や教育の分野で活動した人で、50歳でスピリチュアリズムに出会ってから、交霊会を通じて様々な霊と接触を持つようになりました。その後、培ってきた自然科学的な手法を使って、霊的な世界と法則を探究して、多くの書籍を残したそうです。
それらの書籍の大半は、高級霊と言われる霊性が高い存在たちとの対話によるものが多いのですが、この「霊との対話 天国と地獄」はいわゆる市井の霊たちとの対話でまとめられたものなので、書かれた内容がより身近に感じられて興味深い内容でした。本の中では、普通の人たちが、肉体の死を迎える時、そして肉体を離れた後にどのような経験をしているのかが具体的に語られています。メッセージの送り主である霊は老若男女様々で、亡くなった直後の霊から、死後しばらく経った後の霊もいました。彼らの言葉を聞いていると、150年前に書かれたフランスの古典と言っても、そこに古臭さは全然感じられず、人間の経験はいつの時代や文化の中にあっても、変わらないものだと感じます。
そして、本の中に登場する人たちの人生の経験、他界後の経験や気づきを垣間見ることで、否が応でも自分自身を振り返る気持ちになります。それもこの本の効能の一つと言えるかもしれません(笑)。
彼らの言葉から自分自身の課題に人生を通じて向き合うことや、霊的な知識を学んで、生き方に取り入れていくことの大切さを改めて考えさせられます。肉体を脱ぎ捨てて他界したからと言って、人の意識が急に成長することはないですし、霊的な理解が進むわけではないので、できるだけ地上で生きている内に、霊的な事柄を学んで吸収しておくことは大事だと思いました。
他界後、大抵の人の意識は次の次元に移行していきますが、人によっては様々な事情で、移行できずに地上付近に留まってしまうこともあります。私も場所の浄化を行う時に、時々そういう方々を見かけることがあります。通常、霊的なガイドや先に旅立った存在たちなどが、移行がスムーズにいくように手助けしてくれますが、地上に縛り付けられてしまった人たちはある意味で盲目になっているので、周りにいる霊的な存在を知覚することができず、次の次元に移れるようになるまでの長い期間、地上に留まってしまう場合もあるのです。また、地上にいる間に余りに物質的な考えや欲望を持ちすぎていたり、肉体が全てだと考えていると、他界しても自分が置かれた新しい状況を理解できずに、混乱が起きることも多いようです。
肉体を持って生きているうちに、少しずつでも魂が成長するよう努力したり、霊的な知識を学んで、その知識を取り入れた生き方をしていくことで、いわゆる肉体の死を迎えても、その過程はちょうど蝶がさなぎから脱皮する八日のように、苦しみが少なく、過ぎの次元に移行するプロセスは穏やかでスムーズなものになります。
また、別の視点からですが、地上で生きている人たちが、肉体の死を迎えた人のために純粋に祈ることは、決して漠然とした曖昧なものではなく、彼らが他界して移行するプロセスを本当に助けることができると言うこともよくわかります。ダスカロスも、亡くなった人に白い光を送ることが、彼らの助けになると言っていましたが、そうすることで、亡くなった人は地上のあれこれに縛られたり引き留められることなく、旅立つことができるからです。
人生の経過とともに、私たちは家族であったり友人であったり、動物たちであったり、身近な存在を見送る経験が増え定期ます。そして、誰もがひとつの転生を終えて、肉体を離れる時がやって来ます。だからこそ、肉体の死というのはどのようなものなのか、その後に辿るプロセスがどんなものなのか、霊たちの言葉を聞き、まずは知識としてだけでも心に留めておくことは無駄にはならないのではないかと思いました。
(2020年7月16日)
アラン・カルデック「霊との対話」
